マカオ鴛鴦茶通信

マカオ在住10年の政府公認ツアーガイドが、マカオの最新観光情報をわかりやすくお伝えします。治安が良いピカピカの街マカオで、非日常体験をしてみませんか?

マカオガイドが徹底解説!世界遺産「聖ポール天主堂跡」

f:id:macao-guide:20190826121304j:plain

マカオのランドマーク「聖ポール天主堂跡」は、マカオに来たら必ず1度は訪れたい有名観光スポットです。歴史から彫刻の意匠、アクセスまでどこよりも詳しくお伝えします。

 

www.macao-guide.com

 

概要

f:id:macao-guide:20190826121324j:plain

英語では「Ruins of St.Paul」(ルインズ・オブ・セント・ポール)と呼ばれています。16世紀にマカオに誕生した、アジア最大の教会です。火事により焼失し、17世紀に再建されましたが、19世紀の火事で焼け落ちた後再建されず、ファサードだけが壁のように残っています。

 

マカオ半島旧市街地の世界遺産エリア内にあり、周囲に見どころもたくさんあるので、世界遺産めぐりの拠点にもおすすめです。近くにタクシー停留所もあり、移動も便利に観光できますよ。夜はライトアップされます。

ツアーでは語れないマニアックな歴史

f:id:macao-guide:20190826121348j:plain


実際のツアーでも必ずご案内する場所ですが、主に時間の都合であまり詳しくお話することはありません。皆さん必ずしも歴史がお好きなわけでもないですからね。ということで、興味がある方だけでも、読んでもらえると嬉しいです。

 

成り立ち

聖ポール天主堂跡は、1594年アジア最大の教会およびアジア初の西洋式大学として、イエズス会のアレッサンドロ・ヴァリニャーノ司祭により建てられました。極東地域にキリスト教を布教するための拠点となった場所です。映画「沈黙ーサイレンス」には、聖ポール天主堂で司祭たちが日本へ渡る相談をするというシーンがあります。ヴァリニャーノ神父は各地にセミナリオ(青少年のための修道院)を作り、長崎からヨーロッパへ天正遣欧少年使節団を派遣した人物です。

日本との関わり

アジアで1番大きな教会ということで、完成までに30年ほどかかりました。この頃日本ではザビエルが宣教活動を初めてから10年ほど経っており、キリシタン大名や宣教師が増えていました。一方、日本人がポルトガル商人により奴隷として海外に売られたり、長崎がイエズス会領にされていたり、仏教徒が迫害されたりといった問題が噴出し、秀吉がバテレン追放令を発布します。やがてキリスト教の迫害が始まり、日本26聖人の殉教などの事件が起きました。その後鎖国や島原の乱が起こり、キリスト教の弾圧を逃れるためや、追放されてマカオへやってきた日本人キリシタンが、この教会の建設に参加したと伝えられています。完成から風雨にさらされながら、数百年経った今でも美しい彫刻を目にすると、胸に迫るものがあります。

大火で焼失

教会は1601年の火事の後1602年に再建されましたが、1835年再び全焼しそれ以来修復されていません。現在では大きな石の彫刻のファサードのみが、ハリボテのように残っています。

 

見どころ

f:id:macao-guide:20190826121403j:plain


ファサードに刻まれた、緻密で美しい彫刻は必見です。中でも真ん中の3段目に見どころが集中しています。

 

地下には日本人殉教者の納骨堂や、キリスト教にまつわる芸術品を集めた天主教芸術博物館があり、無料で見学できます。

 

天国と人間をつなぐ5層のファサード

f:id:macao-guide:20190826121417j:plain


聖ポール天主堂跡のファサードには、様々な彫刻が施されています。その1つ1つには意味が込められており、東洋における宣教活動の拠点となったマカオならではの特徴的な意匠が各所にちりばめられています。

 

聖ポール天主堂跡のファサードは5層に分かれており、上から2層は天国の教会、下から2層は地上の教会を表したものです。中央の3層目は、人間と神様をつなぐミステリーの層と言われています。

今は上れないファサード裏

f:id:macao-guide:20190826121453j:plain


以前はファサード裏の階段から4層目のあたりまで上ることができましたが、現在は階段が封鎖されており上れなくなっています。

 

1層目:三角形が示すもの

f:id:macao-guide:20190826121558j:plain


1層目は、三角形のペディメントを用いて、比喩的に父なる神と神の子イエス、聖霊の三位一体を表したものです。目立つ中央の鳥の彫刻は、ハトを表しています。日本では平和の象徴として知られているハトは、キリスト教では聖霊(Holy spirit)の象徴です。ハトの周りには太陽と月、星が配置されています。

 

2層目:イエス・キリストと受難のシンボル

f:id:macao-guide:20190826121618j:plain

 2層目の中央にあるのはイエス・キリスト像です。イエス像の左右には、大きな十字架や鎌を運んでいる様子が描かれています。キリスト像を取り巻くシンボルは、カナヅチやいばらの冠、はしごやクギ、ムチなどイエスがはりつけにされる際に使われたものを象っており、いわゆる受難のシンボルです。

 

3層目:マカオらしい東西文化の融合

f:id:macao-guide:20190826121643j:plain


 3層目には、この教会で1番の見どころがつまっています。まず中央に位置するのが聖母マリア像で、教会で最も重要な存在です。マリア像の周りを花の彫刻が囲んでおり、これは日本を表す菊の花だと伝えられています。日本とマカオ、キリスト教の融合が見られる見どころです。マリア像の周りには6人の天使がいて、聖母を祝福している様子を表現しています。

 

マリア像の右手にある木の彫刻はレバノン杉で、古来より神聖な木とされているものです。聖書にもよく出てきます。左側にあるのは、エデンの園にある生命の樹から湧く不老不死の霊泉、生命の泉です。

 

f:id:macao-guide:20190826121711j:plain

続いて右手のキングギドラのような7つの頭の怪物の彫刻です。笑っているような表情の怪物は、日本でキリスト教を弾圧した徳川家康がモデルだと言われています。聖母が怪物の頭を踏みつけており、聖母の右側には「龍の頭を踏みつける聖母」という意味の漢字が刻まれています。世界で唯一、香港・マカオ、台湾で使われている繁体字(漢字の旧字体)が刻まれた教会です。一般的に中国では龍は神様や吉兆として大事にされていますが、これは西洋の怪物ヒドラであり、悪い龍を表しています。

 

怪物の右手にある骸骨が矢に倒れた彫刻は、死への恐怖に対する勝利を表しています。骸骨の足元には「死を忘れぬものに罪なし」という意味の漢字が刻まれており、キリスト教の「メメント・モリ(死を想え)」という言葉から来ているものだと思われます。

 

f:id:macao-guide:20190826121745j:plain

 マリア像の左には信者を乗せた船が描かれ、その左上には船が天国へ向かうのを見守る聖母が刻まれています。

 

その左側に、羽の生えた悪魔が矢に倒れていますが、その身体はよく見ると胸が大きく、女性の身体をしています。悪魔の足元には「人を罪悪に誘う悪魔」という意味の言葉が刻まれています。

f:id:macao-guide:20190826121827j:plain



3層目の左右には、1対の獅子の彫刻があります。魔よけの獅子、狛犬を表現した部分です。中国のキリシタンは教会もお寺も同じものだと思っていたので、教会にも狛犬を設置したと言われます。普通の教会では絶対にありえない、マカオらしい東西文化の融合を表す、最も重要な部分です。ぜひ見逃さないでくださいね。

 

4層目:ザビエルと3人の聖人像

f:id:macao-guide:20190826122030j:plain

4人の聖人像は、イエズス会と東洋へのキリスト教伝道の偉人を表しています。右から2人目が、日本にもやってきて東洋に最初にキリスト教を伝道したフランシスコ・ザビエル像です。左右の端にあるのは伝道活動を最初に組織したフランシスコ・デ・ボルヤと、アロイシウス・ゴンザーガの像で、右のゴンザーガは青少年の守護神としても知られています。左から2番目が修道会の創始者、イグナチオ・デ・ロヨラ像です。

 

5層目:教会の顔!看板部分

f:id:macao-guide:20190826122225j:plain

5層目には中央に「MATER DEI」、ラテン語で神の母、聖母を表す言葉と、左右に「IHS」、ラテン語で「Iesus Hominum Salvator (救世主イエス)」、イエズス会のシンボルが刻まれています。

ファサードの奥をさらにディープに観光

f:id:macao-guide:20190826122304j:plain

f:id:macao-guide:20190826122331j:plain

f:id:macao-guide:20190826122347j:plain

聖ポール天主堂跡のファサードをくぐると、インフォメーションや聖ポール天主堂の歴史のパネル、かつての教会の柱の跡などがあります。

ひんやり地下納骨堂

f:id:macao-guide:20190826122608j:plain

f:id:macao-guide:20190826122714j:plain

 

f:id:macao-guide:20190826122727j:plain


突き当りまで進み、右手の階段を降りると納骨堂です。日本で殉教した多くの日本人キリシタンの遺骨や、ヴァリニャーノ神父の納骨堂があります。常に賛美歌がかかり、実際に骨を目の当たりにすることのできる、ドキッとする場所です。

天主教藝術博物館

f:id:macao-guide:20190826122839j:plain

f:id:macao-guide:20190826122850j:plain



ここを抜けると、天主教芸術博物館の入口です。無料の小さな博物館には、カトリック関連の聖人像や儀式に使われた品物などの貴重な芸術品が展示されています。混雑時には入場規制がかかりますので、ご注意ください。

 

 開放時間:9:00~18:00(最終入館17:30)

火曜日は14時以降休館(マカオの祝祭日は開館)

行き方・アクセス

f:id:macao-guide:20190826122947j:plain


聖ポール天主堂に行くには、タクシーか徒歩です。市営バスやシャトルバスを利用するなら、リスボアホテルやグランドエンペラーホテルなど、セナド広場周辺で降りましょう。

 

住所:Largo da Companhia de Jesus

開放時間:24時間

 タクシー

f:id:macao-guide:20190826123046j:plain


タクシーに乗る際は、メモに「大三巴」と書いて運転手さんに渡せば確実です。読み方は広東語で「だいさんぱ」です。写真のタクシー乗り場でタクシーを降りたら、すぐ左手に聖ポール天主堂跡があります。

歩いて

f:id:macao-guide:20190826123113j:plain

セナド広場から


徒歩なら世界遺産エリアの中心にある「セナド広場」から、世界遺産の「ドミニコ教会」前を道なりに進み、1つめを左手に曲がりお土産屋さんの並ぶ通りを歩いて、20分ほどです。

ラザロ地区から

 

 ポルトガル風の街並みが魅力のラザロ地区からは徒歩5分ほどです。仁慈堂婆仔屋横の階段を上り、道なりに石畳の道をまっすぐ進むとタクシー乗り場が見えてきます。

 

www.macao-guide.com 

周辺の観光地と見どころ

f:id:macao-guide:20190826124206j:plain

聖ポール天主堂跡付近には、見どころがたくさんあります。ぜひ写真を撮りながら、ゆっくり過ごしてみてください。付近にはスタバなどカフェも数か所ありますよ。

写真撮影に最適な憩いの広場イエズス会紀念広場

f:id:macao-guide:20190826124244j:plain


聖ポール天主堂跡階段下の広場で、世界遺産の見どころの一つです。聖ポール天主堂跡の記念写真は、ここから撮るのがベストです。中国とポルトガルの友好を表したブロンズ像も魅力的です。

 

住所:Largo da Companhia de Jesus

開放時間:24時間

 

中国大陸からマカオタワーまで一望!モンテの砦

f:id:macao-guide:20190826124313j:plain


イエズス会の司祭により運営されていた要塞で、聖ポール天主堂と一つの大きな複合施設を成していました。ここから見る聖ポール天主堂跡も、趣があっておすすめです。今でも大砲台のレプリカが残り、かつての様子を今に伝えています。
眺めのいい場所で、マカオの旧市街地や中国本土を360°見渡せる、写真好きに人気の場所です。

 

マカオ博物館に隣接しており、火曜日から日曜日は博物館のエスカレーターを利用でき、便利です。博物館が休館のときは、ハイキング気分で歩いて上りましょう。

f:id:macao-guide:20190826124448j:plain


住所: Praceta do Museu de Macau, No.112

開放時間:7:00~19:00、マカオ博物館10:00~18:00 (最終入館17:30)月曜休館、マカオの祝祭日開館

 

可愛らしい子どもの神様をまつるナーチャ廟

f:id:macao-guide:20190826124511j:plain

f:id:macao-guide:20190826124521j:plain


1888年に建てられた道教のお寺です。子どもの姿をした力持ちでかわいい人気の神様、ナーチャ様をまつっています。旧城壁をくぐるとナーチャ展示館があり、ナーチャ神の誕生祝いのお祭りの様子やおみこしなどが見学できます。

f:id:macao-guide:20190826124553j:plain

住所:Calçada de S. Paulo, No.6 

開放時間:8:00~17:00、ナーチャ展示館は10:00~18:00(水曜休館、マカオの祝日なら開館)

 

マカオの防衛の歴史を物語る旧城壁

f:id:macao-guide:20190826124633j:plain

ナーチャ廟に隣接しています。ポルトガル人が、マカオをスペイン軍やオランダ軍から守るために築いた城壁の一部が残っている場所です。ここからグランドリスボアと聖ポール天主堂跡のファサードの裏側を一緒に撮影すると、マカオの今昔を表した味のある写真になります。

f:id:macao-guide:20190826124701j:plain

住所:Calçada de S. Paul

開放時間:24時間

 

キュートさNO.1!恋愛巷

f:id:macao-guide:20190826124733j:plain



ピンクと黄色の壁に囲まれ、その間から聖ポール天主堂跡が見えるという可愛らしい小さな通りです。スイーツのお店や宿泊施設、映画館があり、写真好きや観光客でいつもにぎわっています。

 

住所:Travessa da Paixão

開放時間:24時間

 

聖ポール天主堂跡を詳しく知って観光をもっと楽しく!

聖ポール天主堂跡はマカオ最大の観光地ですが、何も知らずに見に行くと大きな壁が一枚あった!というだけの印象で終わりがちです。日本とマカオのキリスト教の歴史や彫刻に隠された意味、周辺の施設や見どころを知っておくと、観光が何倍も楽しめますよ。